生成AIに顧客情報を入れても大丈夫? 士業のためのセキュリティガイド|ChatGPT・Claude・Gemini・Copilotの学習設定と所内ルール【2026年】

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15秒で分かる要点

Q.顧客情報を入れても大丈夫?
A.情報の種類と、使っている契約の組み合わせで決まります。▶ 入力の判断表

Q.無料版を使っているけど、何をすればいい?
A.まず学習をオフにしてください。▶ サービス別の設定

Q.1人事務所でも安全に使える?
A.Microsoft 365かGoogle Workspaceなら1人から契約できます。▶ 契約の選び方

Q.所内のルールはどう作る?
A.ひな形(Word)をそのまま使えます。▶ 所内ルールの作り方

「生成AIに依頼人の情報を入れても大丈夫なのか」。これは、AIを業務に使おうとする士業が最初にぶつかる問いです。答えは「大丈夫」でも「だめ」でもなく、入れる情報の種類と、使っている契約の組み合わせで決まります。

この記事は、当サイトのAI活用の記事すべてが参照する「基準書」です。判断表、4社の規約の比較、設定、所内ルールのひな形までをまとめました。規約は頻繁に変わるため、各項目に確認日と出典を付け、変更の履歴も残しています。本記事は一般的な情報であり、個別の法的判断を示すものではありません。

入れていいか、一目で分かる判断表

まず、情報を4つのレベルに分ける

レベル入力する情報の例
A公開されている情報(法令、通達、官公庁の資料、事務所の公開済みの文章など)
B伏せ字にした依頼人の情報(氏名・社名・住所・日付・金額などを置き換えたもの)
C依頼人の実データ(試算表、契約書、議事録など、伏せ字にしていないもの)
入れないマイナンバー、口座番号、戸籍、健康情報などの要配慮個人情報、未公表の交渉の経緯

次に、使っている契約と組み合わせる

レベル個人のアカウント(学習オン)個人のアカウント(学習オフ・一時チャット)事務所の契約(法人向け)
A○○○
B✕△(1人事務所などで、事務所として認めた場合のみ)○
C✕✕△(事務所のルールに沿って確認と記録をする場合)
入れない✕✕✕

「事務所の契約(法人向け)」とは、既定で会話が学習に使われない契約のことです。Microsoft 365やGoogle Workspaceに含まれるAI、ChatGPT Business、Claude Teamなどが当たります。

資格別のレベルの例

資格レベルAレベルBレベルC
弁護士公開された判決の要約当事者名を伏せた書面の論理の確認契約書の原本のレビュー
税理士通達や改正の解説の整理業種と論点だけ伝えた調査の想定問答試算表の前月比の分析
司法書士法務局の手続き案内の要約名前を伏せた必要書類の確認(戸籍は「入れない」)
行政書士許認可の手引きの要件整理社名を伏せた申請書の下書き申請書類一式の確認
社労士法改正の資料の要約社名を伏せた就業規則の見直し給与データの確認

判断に迷うときの3つの問い

  1. この情報が外に出たら、依頼人は困るか
  2. いま使っているのは、事務所の契約のアカウントか
  3. データを渡さずに済む方法(関数を書かせる、構造だけ伝える)はないか

1つでも迷ったら、入力しないのが原則です。

なぜ士業に特別な注意が必要なのか

  • 守秘義務は、スタッフにも、退職後にも及ぶ:たとえば税理士法第54条は、税理士事務所の使用人などが業務上知った秘密を漏らすことを禁じています。使用人でなくなった後も同じです。行政書士法や社会保険労務士法にも同じ趣旨の定めがあります。
  • 学習に使われる設定での入力は、法律違反の可能性がある:個人情報保護委員会が注意を呼びかけています。本人の同意なく個人データを生成AIに入力し、それが応答以外の目的で使われれば、個人情報保護法に違反する可能性があるという内容です。
  • 小さな事務所でも、緩やかな基準の対象外になり得る:委託を受けて個人データを扱う事業者は、従業員100人以下でも中小規模事業者の特例の対象外です。

参照:税理士法(e-Gov法令検索)/個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について/個人情報保護委員会事務局「個人情報保護法の基本」

▶ 資格別の条文と詳しい解説は:士業事務所のアカウント・権限管理

4社の学習・保存・人のレビューの比較【2026年9月29日確認】

サービス・契約学習への利用保存・人のレビュー
ChatGPT(無料・Go・Plus・Pro)既定で利用。設定でオフにできる一時チャットは学習に使われず、30日以内に削除
ChatGPT(Business・Enterprise)既定で利用しない契約・管理者の設定による
Claude(無料・Pro・Max)利用するかを本人が選ぶ許可すると最長5年、許可しないと30日保存
Claude(Team・Enterprise)対象外契約・管理者の設定による
Gemini(個人のアカウント)「アクティビティの保存」がオンなら利用人がレビューした会話は最長3年。オフでも72時間は保存
Gemini(Workspace)許可なく利用しない人のレビューなし
Copilot(個人のMicrosoftアカウント)設定で選ぶ設定による
Copilot(仕事用アカウント・Microsoft 365)基盤モデルの学習に使われないエンタープライズデータ保護

参照:OpenAI Help Data Controls FAQ/OpenAI Help Temporary Chat FAQ/Anthropic Updates to Consumer Terms and Privacy Policy/Gemini アプリのプライバシー ハブ/Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ/Microsoft Copilot のプライバシーに関する FAQ/Microsoft Learn Copilot Chat プライバシーと保護

「学習されない」と「残らない」は別の話

学習に使われない設定や契約でも、会話は一定期間、事業者のサーバーに保存されます。事業者のサーバーに情報が渡ること自体は避けられないため、事務所の契約でも伏せ字を基本にしてください。

同じサービスでも、開く場所で扱いが変わる

Gemini Notebook(旧NotebookLM)は、個人のアカウントでも、専用の画面で使う限り、原則として学習に使われません。ただし、評価ボタンを押すと内容を人が確認し、最長3年保存されます。また、同じノートブックをGeminiアプリから開いて会話すると、Geminiアプリの「アクティビティの保存」の設定に従って扱われます。

参照:Gemini Notebook Help Privacy and Terms of Use/Gemini Notebook Help Notebooks in Gemini Apps

規約の変更の履歴

時期変更の内容
2025年7月ChatGPTの共有リンクを検索できるようにする機能が撤去された
2025年8月Claudeの個人向けプランで、学習に使うかを本人が選ぶ方式に変わった(許可すると保存は最長5年)
2026年6月ChatGPTの無料版とGoに、日本でも広告が表示されるようになった
2026年7月NotebookLMがGemini Notebookに改称され、Geminiアプリと同期するようになった

参照:GIGAZINE/Anthropic/Impress Watch/Google公式ブログ

今後、規約が変わった場合は、この表に追記していく予定です。

無料版・個人プランを使うなら:サービス別の設定

サービス学習をオフにする場所ほかに確認すること
ChatGPT設定 → データコントロール → 「モデル改善に協力する」をオフ音声モードを使うなら「音声記録を含める」「動画記録を含める」もオフ。単発なら一時チャット
Claude設定 → プライバシー → 「Claudeの改善にご協力ください」をオフ単発ならシークレット(Incognito)チャット
Geminigemini.google.com → 設定とヘルプ → アクティビティ → 保存をオフオンのまま使う場合、自動削除の期間(既定は18か月。3か月・36か月も選べる)
Copilot設定 → プライバシー → 「会話アクティビティのトレーニング」「音声会話のトレーニング」をオフ仕事用アカウントでサインインしていれば、この設定は不要

参照:OpenAI Help Data Controls FAQ(表示名は2026年9月29日に画面で確認)/Claudeに学習させない設定方法(privacy.claude.comに基づく解説)/Gemini アプリ ヘルプ アクティビティの管理/Geminiの履歴を削除する方法(公式ヘルプに基づく解説)/Microsoft Copilot privacy controls/ライフハッカー・ジャパン Copilotの学習をオフにする手順

設定を変えても、すでに学習に使われた過去の会話は取り消せません。依頼人の情報を入れる前に設定を済ませてください。

▶ ChatGPTの画面つきの手順は:士業の生成AIの始め方(安全のための設定)

事務所で使うなら:学習に使われない契約

契約含まれるAI契約できる人数
Microsoft 365のビジネス向けプランCopilot Chat(追加料金なし)1人から
Google WorkspaceGeminiアプリ・GmailのGemini(Starter以上)1人から
ChatGPT BusinessChatGPT2名から
Claude TeamClaude2名から

参照:Microsoft 365 プランと価格/Google Workspace Business エディションの比較/ChatGPT 料金/Claude Team Plan

1人事務所の選択肢

ChatGPT BusinessとClaude Teamは2名からのプランです。1人事務所で学習に使われない契約を選ぶなら、Microsoft 365かGoogle Workspaceを1人から契約し、その中のAIを使う方法が現実的です。メールやOfficeと一緒に、事務所として管理できるアカウントが手に入ります。

▶ 料金の詳細と選び方は:士業が生成AIを使い分けるガイド

チャット以外に増えた「漏れる経路」

経路何が起きるか対策
WordやExcelのアドインチャットと同じ規約が適用される。Claudeのアドインは組織独自の保存設定を引き継がないアドインも事務所の契約で使う
作業を任せるAI(エージェント)Gemini Sparkは学習がオンの設定でないと使えない依頼人の情報を扱う用途には使わない
共有リンクURLを知っていれば誰でも会話を読める。検索結果に表示された実例もある依頼人の情報を含む会話は共有しない
会議の自動記録記録の共有範囲の設定しだいで、参加者以外にも届く相手に伝え、共有範囲を決めてから使う
ファイルの見えない情報コメント、作成者名、非表示のシートが残る渡す前にドキュメント検査を使う
音声モード音声や動画の記録が、テキストとは別の設定で扱われる音声の学習の設定も確認する
ほかのサービスに組み込まれたAI会計ソフトやブラウザの拡張機能のAIは、別の規約で動くそれぞれの規約を確かめる

参照:Anthropicヘルプ Microsoft 365アプリ全体で作業する/Gemini アプリのプライバシー ハブ/Google Meet ヘルプ「自動メモ生成」/Microsoft Support Document Inspector

▶ 共有リンクの実例は:生成AI失敗事例集の事例7/会議の記録は:Workspace×Gemini実践ガイド

伏せ字の方法

伏せる前伏せた後
株式会社山田商事(東京都渋谷区、資本金3,000万円)との業務委託契約A社(製造業・都内、資本金数千万円規模)との業務委託契約
田中太郎氏(昭和45年生、年収800万円)の相続税試算被相続人(50代男性、給与所得者)の相続税試算
令和6年(ワ)第12345号の準備書面ある民事事件の準備書面
○○税務署からの○月○日付照会文書ある税務署からの照会文書

伏せ字の4つのコツ

  1. 固有名詞はアルファベットに置き換える(山田商事 → A社)
  2. 数値は桁や範囲で表す(800万円 → 数百万円台)
  3. 住所は都道府県や市区町村に丸める
  4. 日付は相対的な表現にする(令和6年○月○日 → 約○か月前)

目で直さず、一括置換とドキュメント検査で

目で見て直すだけでは、見出しやコメントに残った実名を見落とします。文書作成ソフトの一括置換で置き換え、実名で検索して残っていないことを確かめてください。ファイルを渡す場合は、Word・Excelの「ドキュメント検査」で、コメントや作成者名、非表示の情報も確認します。

▶ 伏せ字の漏れの事例は:生成AI失敗事例集の事例9/ドキュメント検査の手順は:生成AI×Excel活用ガイド

所内ルールの作り方

禁止するだけでは、隠れて使われる

スタッフが個人のアカウントを業務に使ってしまう「シャドーAI」は、多くの場合、事務所が安全な道具を用意していないことから起きます。個人アカウントの禁止と同時に、使ってよいサービスと契約を事務所として用意してください。

ルールに入れる7つの項目

  1. 使ってよいサービスと契約:事務所の契約だけを使う
  2. 入力の判断表:この記事のレベルA・B・C・入れない
  3. 入力前のチェック:伏せ字、ドキュメント検査、関数で済まないか
  4. 出力の確認:条文・判例・数字は一次情報で
  5. してはいけないこと:個人アカウント、共有リンク、相手に伝えない会議の記録
  6. 入れてしまったときの連絡:報告先と手順。報告した人を責めない
  7. 見直し:時期と担当者

依頼人への説明の文例

依頼人にAIの利用をどう伝えるかは、多くの士業が迷う点です。法律事務所の中には、AIツールの利用方針をWebサイトで公表している例もあります。所属する士業会の指針がある場合はそちらに従ったうえで、次のような文例を参考にしてください。

参照:法律事務所のAI利用ポリシーの公表例

委任契約書に入れる一文の例
「受任者は、業務の効率化と品質向上のため、情報の取扱いに関する事務所の規程に従い、生成AIを利用した業務支援ツールを補助的に使用することがあります。この場合、依頼者の情報は、入力内容が学習に使われない契約のサービスでのみ扱い、必要に応じて匿名化します。最終的な判断と責任は受任者が負います。」

面談で口頭で伝える例
「書類の下書きや資料の整理に、AIを補助的に使うことがあります。その際は、学習に使われない事務所の契約だけを使い、お名前などは伏せています。最終的な判断は必ず私が行います。ご希望であれば、この案件ではAIを使わないこともできます。」

【無料配布】生成AI利用規程のひな形(Word)

この記事の7つの項目、入力の判断表、依頼人への説明の文例、スタッフの確認書をまとめました。青字の部分を書き換えるだけで、事務所の規程として使えます。

ひな形(Word)をダウンロード

もし入れてしまったら

まず会話を削除し、学習の設定を確認して、いつ・何を・どこに入れたかを記録し、責任者に報告してください。個人データの漏えい等に当たる場合は、個人情報保護委員会への報告が必要になることがあります。サービス別の削除後の扱いと、報告が必要になる場合の詳しい説明は、失敗事例集にまとめています。

▶ 詳しい手順は:生成AI失敗事例集(入れてしまったときの対処)

よくある質問

Q.学習をオフにすれば、依頼人の情報を入れてもいいですか?

学習には使われなくなりますが、会話は一定期間保存され、設定は本人がいつでも戻せます。伏せ字にしたレベルBまでにとどめ、1人事務所などで事務所として認めた場合に限ってください。依頼人の実データを扱うなら、事務所の契約を使いましょう。

Q.有料の個人プランなら安全ですか?

料金を払っていても、Plus・Pro・Maxなどは個人向けのプランです。学習の扱いは無料版と同じく設定しだいです。基準は「無料か有料か」ではなく、「個人向けか法人向けか」だと考えてください。

Q.スタッフが個人のスマホで使っていたら?

まず責めずに、何に使っていたかを確かめてください。そのうえで、事務所の契約のアカウントをスマホでも使えるようにし、個人のアカウントを業務に使わないルールを共有します。

Q.会計ソフトに組み込まれたAIは大丈夫ですか?

会計ソフトのAIは、会計ソフトの会社の規約で動きます。汎用のAIとは扱いが別なので、それぞれの規約で、入力したデータが学習に使われるかを確かめてください。

まとめ

生成AIに依頼人の情報を入れていいかは、情報のレベルと契約の組み合わせで決まります。公開情報なら、どの契約でも使えます。伏せ字にした情報は事務所の契約で、依頼人の実データは事務所のルールに沿って扱ってください。マイナンバーや戸籍は、どんな場合も入れないのが原則です。

今日やることは、ひな形をダウンロードして、事務所の名前と使うサービスを書き入れることです。それだけで、スタッフが迷わずにAIを使える土台ができます。

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※本記事は2026年9月29日時点の各社の公式情報と公表資料をもとにしています。規約は頻繁に変わるため、利用前に各社の公式ページをご確認ください。本記事は一般的な情報であり、個別の法的判断については専門家や所属する士業会にご相談ください。

更新履歴:2026年9月 全面改訂(入力の判断表、4社の比較、規約の変更の履歴、所内ルールのひな形を追加)

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