「思いやり」から顧客視点を考える
「顧客視点」や「お客様の目線で考える」などよく聞く言葉だけど、これを実際にやろうと思うとこんなに難しいことはない。
一般的に販売者は商品やサービスの機能や質を伝えることを第一に考える。でもお客様にとって機能が豊富であったり質が良いというのは当然のことであり、だからこそ、その商品なりサービスを購入したいと思ってる訳でしょ。
であれば販売者が一番に伝えなくちゃいけないのは機能や質ではなく、それを購入することによってお客様は何を解決したいと思っているのか?その答えを提示してあげること。
思いやりで考える顧客視点
お客様の問題を解決するための機能であり、質なのだからそれを第一に伝えることは別に間違ってはいないのではないか?ここまで読んであなたはそう思ったかもしれない。
過去の商品に対するお客様の不満を参考に新商品を開発したのだからその新機能を第一に伝えるのは「顧客視点」ではないのか?そう考えているかもしれない。
私も少し前まではその辺りが曖昧ではっきりせず、「顧客視点」に関して明確な考えを持てなかった。しかし先日、あるブログの「思いやり」について書かれた文章をみて頭の中のもやもや感が一気に晴れた。
おもいやりって、「人の気になって考える」ではなくて、
「自分の基準を他人に当てはめない」ってことだと思う。
「俺は大丈夫」を他人に適用しない-novtan別館
「顧客視点」と言うとつい相手の立場に立って考えることが大事だと思いがちだけど、このブログによって別の視点で考えることができる様になった。
冒頭で「顧客視点」を実際にやるのはとても難しいと書いたけど、それはどこまで行っても100%見知らぬ相手の立場で考えることなど出来ないから。でも「自分の基準を他人に当てはめない」ならどうだろう?自分の基準だったら自分でコントロール可能だよね。
相手(お客様)を思いやるのであれば、そこにお客様の要望が含まれてるとしても自分の言いたいこと、伝えたいこと(自分の基準)を前面に押し出すのはやはり「顧客視点」とは言えない。
「自分の基準を他人に当てはめない」を前提にすることで出る発想
今の世の中、ほとんどの商品やサービスは代替えがきく。よほどのことがない限り他社商品とあなたの店舗の商品に大きな違いはない。そのためいかにお客様の声を基に作られた商品であってもそれが競合との差別化には繋がりにくくなっている。
これも冒頭で書いたことだけど、今や商品、サービスの機能や質が良いことは大前提であり、それだけで購入されることはまず有り得ない。そこで「顧客視点」によるお客様の問題の答えの提示が必要となってくるんだけど、これに関してとても良い事例がある。
昨年1月22日のNews Week日本版に掲載されたインタビュー記事で米プロクター&ギャンブル(P&G)の元グローバル・マーケティング責任者、ジム・ステンゲル氏は自社の主力商品の一つでもある紙おむつのパンパースに関してこう語ってました。
理念はブランドに生命を吹き込むものだ。その点、15年前のパンパースは
死んだも同然だった。なぜなら、当時のパンパースはひたすら、吸水性が
よくすぐ乾くという利点だけを追い求めていたからだ。
いいものは作る。だが他社製品と大して変わらない。パンパースに足りなかったのは、いかに人々をハッピーにして喜ばせるか、
驚かせるか、人生を素晴らしいものにするか、という高次の理念だった。母親たちがいつも心配しているのは、オムツが他社製品より速く乾くか
どうかではなく、赤ちゃんが幸せか、ちゃんと育っているか、食べているか、
ということだ。だったらオムツのことは脇へ置き、赤ちゃんを育てる母親の友達になることを
ブランド理念にしようと考えた。すると、赤ちゃんの発達段階に合わせた
オムツを開発したり、ウェブサイトで子育てについての質問に答えるサービスを
立ち上げるなどの発想が生まれてきた。
日本企業は昔のパンパースと同じ間違いを犯している-News Week日本版
ここで重要なのは商品の機能や質を第一に伝える。つまり「自分の基準を他人に当てはめる」ことを止めたことによって初めて「赤ちゃんを育てる母親の友達になることをブランド理念にしよう」という発想が生まれたということ。
赤ちゃんが幸せか、ちゃんと育っているか、食べているか。と言うお客様(母親)の問題を商品の機能をアップさせることだけで解決できるとして前面にアピールしてもそれは「顧客視点」ではない。
販売者としては商品、サービスを購入してもらうことが一つのゴールだけど、お客様にとっての購入はスタート位置に着いただけに過ぎない。そこからどう使って頂き幸せになってもらうかという発想こそが思いやりであり「顧客視点」だよね。
もちろん、「顧客視点」の答えはこれ一つではない。文字通り顧客の数だけ視点はあるし、その考え方も千差万別なんだろうけどね。
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