目的と手段の順番
あなたが醤油を選ぶとき
「本醸造方式」「混合醸造方式」「混合方式」
これらは「こいくち醤油」の主な製造方法だけどあなたはスーパーで数種類ある醤油の中から1つを選択する際にどんな製造方法なのかを最優先にしますか?
もちろん、普通の醤油ではなく「職人がこだわりぬいて作りました!」と言う様な醤油を買いたいとなったら製造方法も選択基準の一つになることはあるかもしれない。
ただその場合でも重要なのは味やコク、香り、風味であり、それらを満たしているものが結果的に特殊な製造方法で作られた職人のこだわり醤油だったというだけ。決して特殊な製造方法ありきで選択はしてないはず。
業界内での知ってて当然は業界の外では通用しない
醤油会社や醤油工場で働いている方なら様々な製造方法を知っているのは当然のこと。そしてその業界生活が長くなればなるほど、その業界外の人達であってもこれぐらい知っているだろうと考える様になりがち。
例えば、私もお客様からネットショップやネットサービスについてご相談を受けることがあるけど、そこで会話の中で「TumblrやBloggerを使って…」などと言った際に相手の方に全く通じていないことが間々ある。
よくよく考えれば私だってネットを日常的に使ってなければそんなサービスを知る訳がない。単純に仕事だから、ネットが好きだから知っているだけであってこれがその業界だけの専門用語だったりしたら尚更、普通の人が知っているはずがない。
となれば、そういった言葉をサイト上で何の説明もなく一番上に掲載しても、そもそも検索されることがないので商品選択の際の比較対象にさえなれない(BtoBであれば別だけど)。
目的と手段の順番
お客様はまず最初に食べ物であれば、味や新鮮さ。雑貨であれば質や丈夫さなど商品そのものに興味を示す。その上で値段であったり納期であったりと言ったものをチェックする。
ショップ側としてはお客様の解決したい問題(目的)がなんであるかを知り、その目的を果たすために最適な提案をする。そしてその目的を果たすのに最適な提案を補完するものとして必要であれば、商品の製造方法であったり保存方法(手段)を説明。
「クセのないマイルドな醤油をお探しのあなたには、味、香り、風味など他の醤油に比べ一番バランスがよいこのお醤油をおススメ致します。何故ならこの醤油は本醸造という方式で製造されていて…」
まずはクセのない醤油が欲しいというお客様に対して、一見してすぐに分かる商品提案をする。細かい説明はその後で十分。
これが手段が先に来るとこんな感じに。
「本醸造方式で製造しています。これは原料となる大豆や小麦を、麹菌や酵母など微生物の力によって、 長期にわたり発酵・熟成させたもので味、香り、風味など他の醤油に比べ一番バランスがよいです」
一見してもそれが自分の求めている醤油なのかどうか分からない。もしかするとその時点で他へ離脱してしまう可能性もあり。
製造方法を記載する必要がないという訳ではないし説明すること自体も間違いではない。
でも手段を何の説明もなくサイトのファーストビューに掲げたり、お客様の目的にすぐに結びつきにくい説明を先にするのは順番が違う。お客様の目的を果たす提案をまず最初にするべき。
質の良さの説明は業界用語ではなく誰にでも分かる言葉で
珈琲やお茶の「遠赤焙煎」やソーセージやハンバーグの「粗挽き」などはその言葉だけでも製法がなんとなくイメージできるし、商品名の一部にもなっていることもあるため多くの方に認知されている。
ただほとんどの場合、製造方法だけを聞いてもイメージは湧かない。それぞれの業界の中にいるとその言葉はだれでも知っているし、その言葉イコール「高級」であったり「質の良さ」を示すものなので当然の様に前面に掲げているというショップサイトは少なくない。
しかしそれは私たち業界の外にいる人間にとっては全く意味の分からない言葉だし、その言葉は私たちの目的とどう関係があるのか?その言葉自体がお客様の問題解決になっているのか?
業界内だけの共通語、目的と手段の順番。改めて見直してみましょう
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