音楽はコミュニケーションにおいて最も重要ではなくなったということ

公開日: : 最終更新日:2016/04/09 想いの伝え方, 集客、販促企画, 音楽に関すること , ,

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もう何年も前からCDが売れなくなったという話は出ている。デジタル配信に変わっていっただけかと思えばその代表的(海外では)なプラットフォームだったiTunes Storeの売上も落ちちゃってるよ、どうするのってのがこの記事。

もはや音楽を売るビジネスモデルは古い? iTunesの音楽でさえ売れなくなってきている-iPhonePLUS powered by 週刊アスキー

ただこれは記事中にも書いてあるように全世界でのお話であってそもそも日本ではiTunes Storeがデジタル配信の主流って訳ではないので日本に限定して考えるとまた話は違ってくる。

かつて90年代、日本でバカみたいにCDが売れていた時代があった。それがどんどん売れなくなっていったのは1つ2つの理由ではなく本当にたくさんの理由が複雑に絡んでいるのだろうけど、その中でも自分が思うのは音楽が他人同士のコミュニケーションにおいてさほど重要ではなくなったっていうこと。

今も昔も本当に音楽が好きで家でも外でも何かしらの音楽に触れているって人の数はそれ程変わってないような気がする。でも昔はそうでない人でもCD買ったり借りたり歌ったりしてた。それが他人とのコミュニケーション手段として有効だったから。

今ではあまりにも音楽の種類が細分化しすぎちゃって初対面なんかで「どんな音楽聞きます?」って言ってもたいてい全く知らない名前言われて「はぁ」で終わっちゃうしね。そこから新たな会話に発展しないもの。なのでそれ程音楽が好きでもない人はそこにわざわざお金を使わなくなっていった。

今はそういった人が音楽を買わなくなった分、全体の売上が落ちてしまっているのだと思う。プラットフォームの問題ではない。

だったらお客さん同士に限らず提供側やミュージシャン側とお客さんであったり様々な形でコミュニケーションを取る仕組みを考えていかなきゃいけないはずだよね。

でも例えば今、世界ではSpotifyのようなフリーミアム・月額課金のストリーミングサービスが主流になりつつある。日本だとソニーのMusic unlimitedなんかが有名かな。月980円払えば登録してある楽曲は聞き放題ってやつ。

こういったサービスを日本でも定着させて新たな音楽ファンを掴んでいくべきだと思うけど無理っぽい。何故なら他のサービスは知らないけど少なくともMusic unlimitedからは色々な音楽に触れてもらって新たに音楽好きを増やしていこうという意欲を全く感じないから。

例えば課金しないと30秒しか聞けない。課金してもメールマガジンなどで新しい情報を知らせるといったことは一切しない(かろうじてFacebookページはあるけどどちらかと言うと会員登録させることが主眼の投稿が多いような気がする。違うでしょ、このページにいいね!してる人ってほとんど既に登録してる人なんじゃないの?)。これだと結局、既存の音楽好きしか利用しないので裾野は全く広がらない。

Spotifyが何故、世界中で利用者が増え続けているかと言えば制限付きだけど無料でも多くの曲を聞けるようになってるから。

増加の理由の1つは、同社が2013年末にモバイルアプリを刷新し、ユーザーが「Android」と「iOS」で音楽を無料でストリーミングできるようにしたことだ。Spotifyはその当時、リリース後1週間でモバイルアプリのダウンロード件数が4倍に増加したと述べていた。


Spotify、有料登録ユーザー数が1000万人に増加
-CNET japan

まずは興味本位でもいいから音楽に触れてもらう。お客さん同士ではないけど提供側とお客さんのコミュニケーションの接点を作ってもっと聞きたくなったら有料会員になってねというアプローチをする。

これと比べるとMusic unlimitedはとにかく登録さえさせてしまえば聞いても聞かなくても決まったお金が入ってくるしぐらいにしか考えていないのだと思う。こんなやり方で新たな音楽ファンなんて作れるはずない。目先の利益さえ取れればいいって考えてる業界が流行るはずないし先細っていくのは当然のこと。

Youtubeもそうだけどこの定額制聞き放題ってサービスも上手く使えば新たな音楽ファンを増やすことだって可能なはずなのに何故、これだけ音楽が売れなくなってると言われているのにも関わらずちゃんとコストと手間をかけて長期的な拡大を目指そうとしないのかな?

昔のように他人同士のコミュニケーション手段として音楽が最優先される時代はもしかしたらもう来ないかもしれない。だからといって音楽の提供側までもがお客さんとのコミュニケーションコストを払わずに目先の利益だけを追いかけていていい訳がない。そうなったら本当に今の音楽業界は死滅する。

CDも配信も昔に比べたら売れなくなってる。音質さえ気にしなければいくらでもタダで楽しむことも出来るしね。でもライブだったり握手会だったりという体験はタダでは手に入りにくい。

いわゆるAKB商法を肯定も否定もしないけど握手会ってちゃんとコストも手間もかけてるよね。本人達の実入りが少ないとか問題点もいっぱいあるんだろうけど、ちゃんと提供側とお客さんのコミュニケーション手段として成立してるしね。

アイドルだからって、あんなの音楽じゃないって頭から否定する人も多いけど、逆にこんな指摘もある。

ここ最近のアイドル楽曲はむしろ音楽的に多様化が進み、質が向上し続けていると言わざるを得ない。その傾向は今年に入ってからますます顕著になってきた。要するにアイドルシーンが限界まで「曲なんて何でも構わない」という音楽軽視の傾向を押し進めた結果、「何でも構わないのならいい曲を作ろう」という動きがどんどん広まっている。シーンは活発で表現は広がりを見せ、またライブの盛況やCDの売り上げ増によって予算も増えており、良質な音楽を志すスタッフが自由にものづくりできる状況が整っているのだ。


「まるで洋楽」というレベルを超えた、Perfumeと中田ヤスタカの挑戦
-Real Sound

AKBはじめアイドルのシングル、概ねBOOKOFFとかの中古屋の在庫はだぶつき気味で、先日出たはずの新譜がとっとと50円セールとかになっていたりもするわけですが、AKBグループの中でもHKT48は今伸び盛りなのか他に比べると在庫が少なかったり、AKB48でも「恋するフォーチュンクッキー」は他と比較して在庫量が圧倒的に少なかったり、乃木坂46も名曲「君の名は希望」だけついぞ見かけなかったり。
間違いなく「楽曲に対するニーズ」っていうのはあるんだけど、新品の売り方がああいう形なだけにそれが非常に見えにくくなっているのはちょっと悔しい。


2014年07月21日
-WASTE OF POPS

全部が全部ではないにしてもちゃんといいものを作ろうという意識があって、コミュニケーションのコストも手間もしっかりかけてるんだから、そういうところにはファンもつくし色々なジャンルの音楽を知れるという意味でも音楽の裾野を広げる役割も果たしてる。だってモータウンもアシッドハウスもヘビメタもハードロックもスカも音頭もアイドルって本当にあらゆるジャンルの音楽を内包してるからね。

別にアイドル以外の全てのミュージシャンも握手会やればいいなんて全く思わないけど何らかの形で提供側とお客さんだったりお客さん同士だったりのコミュニケーション手段をちゃんとコストと手間をかけて作っていくことはものすごく必要だと思う。

音楽がコミュニケーションにおいて最も重要な手段ではなくなった今だからこそ、尚更ね。じゃないと誰のところにも音楽が届かなくなる。

そう考えると音楽に限らずどんな商売でもやっぱりコミュニケーションのコストと手間をかけないところからダメになっていくんだろうな。


    

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