ストーリーを『伝える』だけではなく『感じさせる』
商品を販売するにはストーリーを伝えるのがお客様の記憶に残るので売りやすくなる。とは言うものの、常にお客様に伝わるものを作るのはなかなか大変。
今回は少し視点を替えて、ストーリーを『伝える』だけではなく『感じさせる』ということに関してのお話し。
写真を最大限に活用する
これは特に女性をターゲットとしてた商品を販売している店舗で有効な方法。
単純に商品だけを撮影して掲載するのではなく様々なシーンの中に商品を入れ、写真でストーリーを作る。もちろん写真でストーリーを作るといっても、何枚も撮影してということではない。1枚で十分。
「お皿を見せずにお皿を売る方法」の中で食器販売をしているからといって、食器を前面に出した写真だけの店舗よりも、食卓があり、料理が盛られていてそこに家族がいるといった雰囲気を出した写真が多い店舗の方が、購買意欲が湧くと書いた。
シーンの中に商品を入れるというのも同じこと。上記の例で行くと、たった1枚の写真であっても、自分の家での食事や家族の笑顔といったことが自然とお客様の頭に浮かぶ。
テキストで何十行も書くよりも、たった1枚の写真でお客様ごとに独自のストーリーが頭の中で展開していく。
商品のネーミングにこだわる
これは以前、セミナーで話したことだけど、商品のネーミングによってもストーリーを感じさせることが可能。その時、例として出したのは、ローソンで販売してる「スプーンで食べるプレミアムロールケーキ」
このロールケーキの特徴は、驚くほどの濃厚なクリームの量。通常、スーパーやコンビニなどの量販店で販売していたデザートでは、型崩れしなくて安上がりな植物性油脂を混合した生クリームがよく使われているらしい。
でもローソンでは、デザートの専門店などで人気の高い純生クリームにするために乳業メーカーと協力し、牛乳から作った3種類のクリームを混合した純生クリームを新たに開発。
さらに菓子職人や有名洋菓子店が使用する、高級小麦粉(神戸の製粉メーカー製「宝笠印」の小麦粉)を使っていながらも150円という低価格を実現。
ただそういったことをこの商品は公式サイトにも店頭にも書いていない。パッケージにも一応、純生クリーム使用とは書いてあるけど、でもそれだけ。
例えば「スプーンで食べるプレミアムロールケーキ」の商品名が、「純生クリームたっぷりのプレミアムロールケーキ」だとか、「濃厚純生クリームふわふわプレミアムロールケーキ」であったり、店頭POPやパッケージに詳細な情報があったらどうだろう?
「コンビニで売ってるもんだからそんなにたいしたことはないだろう」
「所詮、150円だから「たっぷり」とか「ふわふわ」と言ってもたかがしれてるだろう」
「たっぷり」、「ふわふわ」や「高級」などは直接、言葉にすると自分の中にあるそれまでの「たっぷり」、「ふわふわ」や「高級」のイメージと比較してしまう。するとコンビニで販売しているとか、値段が安いというファクターがマイナスに働く。
この商品がすごいのは、高級素材を使っていることや、改良を重ねてコンビニで販売するものであっても、純生クリームを使うことを可能にしたなどのストーリーを一切、言わずに「スプーンで食べる」という言葉だけで、お客様にそれ以上のストーリーを想像させてしまったという点。
この「スプーンで食べる」という商品名を見た時に私の頭の中では、多分、手に持って食べられないぐらい柔らかくて濃い生クリームで、しかも外側もふわふわなんだろうな、だからスプーンじゃなきゃ食べられないんだろうな、というところまでストーリーが一瞬で浮かんだ。
お店やメーカーが伝える「美味しい」では、私達の頭の中にストーリーは生まれない。なぜなら、自分の中の過去の美味しかったものと比較して、それに比べたらそうでもないだろと否定から入ってしまうから。
しかし、自ら想像する「美味しそう」は過去の美味しかったものを頭の中では既に超えてしまっている。だからこそ買いたい、食べたいとなる(それで食べたらたいしたことなかった。ではダメだけどね)。
そしてこの商品は「スプーンで食べる」という言葉によって私からその想像を実に上手く引き出した。
ストーリーを『伝える』だけではなく『感じさせる』
しっかりとしたストーリーをちゃんと伝えるということももちろん重要。ただこちら側から伝えられるストーリーには限界がある。
そこで今回、紹介したような方法を使い、こちらから伝えることは最小限にとどめ、後はお客様にストーリーを膨らましてもらう。
お客様にストーリーを想像させることで、よりあなたの店舗、商品がお客様の記憶に残るものにしよう!
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