感動するストーリーにこだわる必要なんてない
コンテンツマーケティングを行う上でショップや店長、店員などのプロフィール。商品のヒストリーなんかをストーリーとして伝えることが大事というのはよく言われている。ただこのストーリー、何故か感動、涙といったものばかりを売りにしているものがホントに多い。
もちろん、笑わせるよりも泣かせる方が簡単だし、感動させた方が印象に残りやすいからというのは分かる。でもだからといって誰もがこぞってそこばっかり狙うのも何か違うんじゃないかな。
今回は感動、涙なんて手段を使わずともお客様の印象に残るストーリーを作る方法について。ポイントは余白の有効活用。
子供はストーリーなんて気にしちゃいない
今もやっているのか分かんないけど、昔、Eテレでやってた「スキマの国のポルタ」ってアニメが好きでよく見てた。そしてこれも大分前だけど、ほぼ日刊イトイ新聞の「あのひとの本棚」でその「スキマの国のポルタ」の原作者である絵本作家の荒井良二さんが自分の絵本を紹介していた。そこでの彼の言葉がすごく印象に残ってる。
本棚から絵本を引っ張り出してきて、
1ページだけ開いて
自分の大好きな「めだか」のちいさい絵とか、
それだけを確認したら、はい終わり、みたいな。
絵本との付き合い方って
それでいいんじゃないかと思うんですよ。
「あのめだかに会いたい! あ、いたっ!」
で、本棚に戻す(笑)。
ストーリーなんかどうでもいいやと。
ぼくはね、そう思います。
えほんのこども (講談社の創作絵本)
荒井 良二
他にもいい言葉いっぱいあるけどその中でもこの部分が特に好きだ。私も映画やドラマってストーリーよりもあの場面の夕焼けがめちゃくちゃ綺麗だったなとか、レストランのシーンで注文取りに来たウェイトレスさんが可愛かったなとか、そういったある特定の場面を一つでも気に入ったらそれだけでその作品を好きになっちゃうって方だから。こういうのって子供に限らず大人でもあることなんじゃないかな。
直接的にはストーリーと関係ないけど、何か印象に残るシーンってあるよね。話が脱線したところがとても面白かったとか。それこそ引用したような余白を埋めるためだけの小道具的なものとかね。
感動させよう、泣かせようってことだけ考えて頑張ってストーリー作ると、ついついそういったハンドルの遊びのような余白を忘れてしまいがちになる。ただそういった部分にこそ読み手に強い印象を残すものが隠れてたりするってことも忘れないで欲しいな。
読み手に想像させるスキをちゃんと作る
先日、YoutubeでNHKのトップランナーにラーメンズがゲストで出ているのを見た。その中で小林賢太郎さんがコントの作り方の話をしていてこれもまたとても興味深いものだった。
例えばコンビニのコントを作る時に店員役に真っ白な衣装で真っ白なエプロンを付けさせる。そうすることで観客は自然と自分がよく行っているコンビニを思い浮かべて感情移入しやすくなる。余白を作って観客にストーリーの背景を想像してもらうことで、逆に自分事にしてもらいやすくなるってことらしい。
最初の荒井良二さんは余白にストーリーとは一見、関係のないものを入れる。小林賢太郎さんの方はあえて余白を作る。これってやってることは逆のことだけど、結果として見る人の想像力を掻き立ててるってことでは一緒だよね。
どちらもストーリーだけを追い求めるのではなく、余白を上手く使って見る人に想像させて気づいたらその人の作り出す世界に嵌ってしまっている。すごく理想的な想いの伝え方だ。
想いを伝えるためのストーリーとは一見、関係のない名詞や具体的な地名などを出すことで印象つける。長いストーリーのある一部分だけを切り取って見せてそれ以外の部分を自分事として想像してもらう。私たちでもブログやSNSなどで上手く使っていけると、辛気臭いだけじゃないストーリーを伝えていけるよ。
最後にもう一つ、荒井良二さんの言葉を「たいようオルガン」という絵本について
これもストーリーが、ほとんどないんですよ。
「たいようオルガン」の下を「ゾウバス」が
ただどんどん進んでいくという(笑)。
ものすごく質問されましたねえ。
「たいようオルガンって何ですか?」
「なんでゾウバスなんですか?」みたいな。
いつもつっこまれてます。
まあ、つっこまれるものを作ってるし、
それもコミュニケーションだと思って楽しんでますけど。
ちなみに質問してくるのは大人ですね。
子どもはそんな質問はしません。
わかんなかったら無視、面白かったら食いつく。
それだけです。
ストーリーを一方的にただ伝えていくだけじゃなくて、それがコミュニケーションのきっかけとなれば、よりお客様との距離も近づいていくよね。
たいようオルガン
荒井 良二
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