2025年10月3週 士業向けIT最新情報

士業の皆様の業務に関連する2025年10月12日から18日までの最新IT動向を解説します。多忙な専門家の皆様が短時間で情報を把握できるよう、次の4つの主要なニュースを厳選して紹介します。

1.[弁護士向け]2026年からの司法試験デジタル化、出願はオンラインに

2026年から司法試験および予備試験の出願手続きがオンライン化され、マイナンバーカードが必要になる見込みです。また、2026年の司法試験では、PC上の法文機能に加えて紙媒体の法文も配布される予定と発表されました。

オンライン出願:
出願、受験料納付、受験票や成績表の受け取りまでの一連の手続きがオンライン化される予定です。この手続きには、電子証明書が有効なマイナンバーカードが必要になると見られています。

試験会場:
試験場は原則として各都道府県に1か所以上が設置される予定です。

試験用法文:
2026年の司法試験については、PC画面上の法文機能と併せて、紙媒体の法文が配布される予定と発表されました。ただし、それ以降の試験(予備試験含む)での扱いは検討中であり、CBTシステム上の法文操作への習熟が求められる状況に変わりはありません。

この移行は、法曹界に求められるデジタルリテラシーの foundational shift を示唆しています。これらのデジタルツールの早期習熟は、受験生のみならず、ますますデジタル化する司法制度に対応する実務家にとっても、やがて競争上の優位性となる可能性があります。

参照:司法試験等のCBT方式の導入及び出願手続のオンライン化に関するQ&A

2.[会計士・弁護士向け]AI搭載VDRがM&A支援の新常識へ、士業連携モデルが始動

会計士や弁護士などの士業と連携し、売り手企業の支援に特化したAI搭載VDR(仮想データルーム)の提供モデルが本格的に始動しました。この新しい枠組みは、M&Aプロセスの質とスピードを向上させることが期待されます。

従来型M&Aの課題:
これまでの仲介型M&Aでは、仲介者が売買双方の代理人を務める「両手取引」による利益相反の懸念がありました。また、資料が担当者ごとに管理され属人化し、情報の整理や開示に時間がかかるという問題も指摘されていました。

解決策:
リーガルテック株式会社の「リーガルテックVDR」は、AIによるデューデリジェンス補助や契約書レビュー機能を搭載しています。士業がVDRをホスティングすることで、売り手企業は専門的支援とデータセキュリティを確保でき、士業自身がM&A取引における「信頼のハブ」として中心的な役割を担う体制を構築します。

この「士業連携モデル」は、士業が単なる助言者の役割を超え、M&Aプロセスの中心的ハブとなる絶好の機会を提示しています。VDRをホスティングすることは、クライアントの依存度と取引の透明性を高める、新たな高付加価値サービスとなり得るでしょう。

参照:AI搭載リーガルテックVDR、M&Aの新常識へ「売り手支援×士業連携」モデル始動

3. 自治体のDX推進、石川県庁が電子契約「クラウドサイン」を導入

石川県が、県のデジタル化推進計画の一環として、契約業務の効率化を目的に電子契約サービス「クラウドサイン」の利用を開始しました。同サービスは全国の自治体で高い導入シェアを誇っており、行政DXの流れを象徴する動きです。

導入目的:
これまで紙や対面で行われてきた契約手続きをデジタル化し、業務効率化とDXを加速させることが主な目的です。

期待される効果:
この取り組みは、県庁だけでなく、契約相手となる事業者側の業務効率化やコスト削減にもつながります。また、住民や自治体職員の利便性向上にも寄与すると見込まれます。

市場動向:
全国の自治体における電子契約の普及率は約20%ですが、そのうち「クラウドサイン」の導入シェアは約70%に達しているという調査結果があります。

地方自治体による電子契約の採用拡大は、公的機関と取引のある事務所にとって、デジタルへの習熟が必須条件になりつつあることを示しています。この傾向は今後さらに加速し、関連プラットフォームの習熟が基本的な業務要件となる可能性が高いといえるでしょう。

参照:石川県庁が「クラウドサイン」を利用開始

4. [弁護士向け]民事裁判の全面IT化、弁護士のシステム登録が課題に

来年5月までに義務化される民事裁判の書類オンライン提出システムについて、対象となる弁護士の登録率がまだ6割に留まっていることが明らかになりました。制度開始を半年後に控え、登録の遅れが課題として浮かび上がっています。

制度の概要:
民事裁判の全面IT化に伴い、訴状などの裁判書類をオンラインで提出することが弁護士に義務付けられます。

現状:
義務化まで半年という期間が迫る中、このオンライン提出に必要となるシステムの登録を済ませた弁護士は、全体の6割に留まっているのが実情です。

この低い登録率は、制度の導入と実務家の対応との間に大きなギャップがあることを浮き彫りにしています。これは訴訟手続きに混乱をもたらすリスクをはらんでおり、弁護士会や各事務所がこの必須の移行に向けた研修とサポートを強化する必要性を示唆しています。

参照:民事裁判IT化で弁護士のシステム登録6割、義務化まであと半年

まとめ

今週取り上げた司法試験のデジタル化、AIによる新たなM&A支援モデル、電子契約の行政への浸透、そして裁判手続きのIT化は、それぞれ独立した事象ではありません。

これらは、士業の根幹業務にテクノロジーが急速に統合されつつあることを示すデータポイントです。事務所にとっての課題は、もはや適応すべきか否かではなく、これらの技術的変化をいかに迅速に戦略的優位性へと転換できるかという点にあるでしょう。

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