士業を営む皆様にとって、日々の業務に欠かせないパソコン。そのパソコンが、いつまで安心して使えるか、考えたことはありますか?来る2025年10月14日、Windows 10のサポートが終了します。この日を境に、お使いのパソコンのセキュリティ・アップデートは停止し、これまで享受していた「安心」が失われることになります。
私たち士業にとって、パソコンは単なる業務ツールではありません。それは、お客様の大切な情報を預かる「資産」です。サポートが終了したパソコンを使い続けることは、事務所の信頼性に関わる重大なリスクをはらんでいます。

「サポート終了」とは何か?3つのリスク
Windows 10のサポート終了は、単にアップデートが来なくなるだけではありません。具体的には、以下の3つの大きなリスクが考えられます。
リスク1:情報漏洩の危険が増す
サポートが終了すると、新たなセキュリティパッチが提供されなくなります。これは、もし新たな脆弱性が見つかったとしても、それが修正されないことを意味します。結果として、お客様の個人情報や企業の機密データが、サイバー攻撃の標的にされるリスクが飛躍的に高まります。情報漏洩は、士業事務所にとって致命的なダメージとなりかねません
リスク2:業務の停止・不安定化
セキュリティ面だけでなく、ソフトウェアの動作不良やパソコン自体の予期せぬトラブルが頻発する可能性も出てきます。OSが不安定になることで、これまで問題なく使えていた業務ソフトが突然動作しなくなったり、パソコンが頻繁にフリーズしたりするかもしれません。これにより、申告業務や契約対応といった重要な業務に支障をきたし、業務効率が著しく低下する恐れがあります
リスク3:信頼と法的リスク
情報管理の甘さは、クライアントの不信感を招くだけでなく、法的責任問題に発展する可能性も否定できません。個人情報保護法などの法令遵守が求められる士業において、適切なセキュリティ対策を怠ることは、社会的な信用を失墜させるだけでなく、法的な罰則の対象となるケースも考えられます
無料延長(ESU)って何?本当に安心?
Microsoftは、個人向けPCユーザー向けに「無料のExtended Security Updates(ESU)プログラム」として、Windows 10のセキュリティ更新を1年間(2026年10月まで)提供すると発表しました。これは朗報に聞こえるかもしれませんが、いくつかの条件がある上に、あくまで「延命策」であることを理解しておく必要があります。
具体的には、Microsoftアカウントでサインインし、Windowsバックアップを利用した上で、ポイント交換によってESUを受け取る形です。しかし、ESUはあくまでセキュリティアップデートの提供に限定されます。新機能の追加や技術サポートは提供されません。つまり、根本的な解決にはならず、新しいOSの機能性や、より高度なセキュリティ環境の恩恵は受けられないのです。
【要確認】あなたのPCは「個人向け」?「法人向け」?見分け方と選び方
ご自身のPCが「個人向け」か「法人向け」かを正確に把握することは、今後のPC戦略を立てる上で非常に重要です。以下のステップで確認してみましょう。
Step 1:エディションの確認
まず、お使いのWindows 10のエディションを確認してください。 「スタートボタン」を右クリックし、「システム」を選択します。表示される画面で、「Windowsの仕様」欄にある「エディション」を確認します。「Windows 10 Home」と表示されていれば個人向け、「Windows 10 Pro」と表示されていれば法人向けのエディションです。
Step 2:購入経路の確認
次に、PCの購入経路を思い出してみてください。
家電量販店や一般的なオンラインストアで購入したPCは、エディションがProであっても個人向け仕様であるケースが多く見られます。一方で、法人向けのPC販売ルートや、企業向けのリース契約で導入したPCは、法人向けであることがほとんどです。
Step 3:機能で見極め
Windows 10 Proの機能の一部が利用できるかで判断することもできます。 例えば、BitLocker(ドライブ暗号化機能)、リモートデスクトップ(外部からのPC操作機能)、グループポリシー(PCの設定を集中管理する機能)などが使えるか確認してみましょう。これらの機能が標準で有効になっていれば、法人向けの色合いが強いと言えます。
ただし、「Pro」エディションであっても、ハードウェアが家庭用PC仕様の場合があるため注意が必要です。耐久性や安定性、サポート体制は、家電量販店で販売されているProエディションと、法人向けに特化したモデルとでは大きく異なることがあります。
なぜ士業には法人向けPCが必要か?
士業の業務特性を考えると、法人向けPCの導入は単なる選択肢ではなく、もはや必須の対策と言えるでしょう。その理由は以下の点にあります。
強いセキュリティ(暗号化・ユーザー認証)
法人向けPCは、BitLockerによるドライブ暗号化機能が標準で搭載されていることが多く、万が一の盗難や紛失時にもデータ漏洩のリスクを低減できます。また、より強固なユーザー認証システムにも対応しているため、不正アクセスを防ぎやすくなっています
トラブル時の優先サポート体制
法人向けPCには、一般的にビジネス用途に特化した手厚いサポート体制が用意されています。万が一PCにトラブルが発生した場合でも、迅速な対応や復旧支援が期待できるため、業務停止のリスクを最小限に抑えることが可能です
長時間稼働・耐久性を意識した設計
士業の業務では、PCが長時間稼働することが珍しくありません。法人向けPCは、連続稼働を前提とした高品質な部品が使われており、耐久性や安定性に優れています。これは、突然の故障による業務中断を避ける上で非常に重要です
複数台管理にも強い設計
将来的に事務所内のPC台数が増える場合でも、法人向けPCは集中管理しやすい設計になっています。例えば、Active Directoryとの連携や、セキュリティポリシーの一括適用など、複数台のPCを効率的に管理するための機能が充実しています
今すぐできる対策ステップ
Windows 10サポート終了に向けて、今すぐできる対策は以下の通りです。早めに行動を開始し、事務所の安全を守りましょう。
ステップ | 内容 |
1 | PCのOSバージョンとスペックを確認(Windows 11対応可否) お使いのPCがWindows 11にアップグレード可能か、または新しいOSに対応できるスペックがあるかを確認しましょう |
2 | データの二重バックアップ(外部・クラウド) 重要な顧客データや業務ファイルは、外付けHDDやクラウドストレージなど、複数の場所にバックアップを取る習慣をつけましょう |
3 | 延長利用か、買い替えかを判断 ESUによる1年間の延長利用でしのぐのか、それともこの機会にWindows 11搭載の新しいPCに買い替えるのかを検討します。事務所の状況や予算に応じて最適な選択を行いましょう |
4 | 法人向けPCへ切り替え、必要なら専門家に相談 新しいPCを導入する際は、セキュリティやサポート体制が手厚い法人向けPCを検討してください。もし判断に迷う場合は、IT専門家やPCベンダーに相談し、最適な構成のアドバイスを受けることをお勧めします |
対応の早さが、事務所の安心をつくる
Windows 10サポート終了は、士業事務所にとって大きな転換期となります。しかし、これを単なる危機として捉えるのではなく、事務所のセキュリティ体制を見直し、IT環境を最新化する絶好のチャンスと捉えることもできます。
適切なPC選びと、それに基づいた体制整備は、お客様からの信頼をより一層高め、結果として事務所の競争力を強化することに繋がります。
ぜひ、この機会に事務所のPC環境を見直し、早めに行動を起こしてください。あなたの事務所の未来の安心は、今日の決断にかかっています。